ICF国際審判員講習会と試験を受けて



◇全体の流れ

今回の国際審判員のテストはアジアンカップカヌーポロ選手権大会に付随して行われました。
アジアには国際審判が極端に少ないのと、カヌーポロが普及していない為、 審判講習会も試験の前日2日間にわたっておこなわれました。

今回日本からの参加は僕一人でした。
横浜商業高校の渡辺先生から進められ
「なるほど、そんな物があるのか。一丁やってみるかな」
と思ったのがきっかけです。

その後、連盟に推薦してもらい、講習会と試験に参加するに至りました。
ICF国際審判の試験を受けるのもチームが大会にエントリーするのと同様に連盟を通して手続きします。


講習は1日半の座学。
その後に2日半試験を行いました。
試験は筆記と実技です。
筆記は主にルールに関する問題です。
実技は実際にゲームで笛を吹いて、それをICF審判が採点していました。
講習会の受講料は250USドル、ICF審判の受験料は20USドルでした。
2日間で250USドルなので安くはないですね。否、高い。


◇座学では具体的に何をしたのか?

香港にあるスポーツセンターで2日間講習が行われました。
スポーツセンターは、 岸記念体育館のようなもので香港のスポーツ団体の事務局が集った建物です。
その中の研修室でアイルランドから来たICF審判である Tom ColtonとCarmel VekinsがPower Pointやビデオ、を使い講義しました。


初日は朝9時から17時までみっちり座学をやり、2日目は午前中が前日に引き続き講義、 午後は実際に会場に行き実技の試験に入りました。

座学は自己紹介から入り、いきなり下手な英語を披露するハメになってしまいました。
それからは、2人の英語を聞き取るのと、 発言する機会もなにかと多かったのでチョットした苦労が続き、少しばかり疲れました。

講義の内容は基本的にルールについての解釈の勉強です。
勉強したのはルールのキャプター3についてだけです。
後は審判に必要な心得とか、基本的な知識についてなどです。

その他に、どのような場合にカードを出すべきか?
アドヴァンテージについてなど、皆で議論しました。
僕も今回少し勉強して分かったのですが、ルールの中にもはっきりしない箇所が幾つもあり、 それについてたくさんの質問が出ていました。

そういった意味では、カヌーポロについて議論しあうのは、なかなか興味深いものでした。


◇実際、笛を吹いて思ったこと

僕の場合は、審判経験が少なすぎたというよりも、 カヌーポロ自体に接する機会が少なかったように思えます。
事前にルールを勉強しているときのも、 こんなルールがあったのかと思うくらいだったので、困ったものです。
僕に関しては99年の日本選手権大会に出場して以来、 ほとんどポロのトレーニングもしていなかったし、ゲームにも参加していませんでした。

主審、副審、線審と全て2回づつやりました。

僕の考えとしては、スピーディーなゲームの展開を考えて、 なるべくアドヴァンテージを見逃さないように心掛けるのと、 ホイッスルやカードは出しすぎないと考えていましたが、少々間違っていたのかもしれません。

僕が主審をやっているときでも香港の人が副審をやっていると、 すぐにカードやら笛を吹くなどして、清水さんに
「朝野、副審に主導権握られてるじゃないか」
って言われてしまうくらいでした。

これについては、僕達落第組みは香港の審判に嫉妬し
「あいつ等、ICFにアピールするためにやたら笛を吹いてるぞ」
なんて言ってましたが、香港の審判がたくさん合格したところを見ると、 どういうレフリーが正しいのか判断がつきません。


◇日本のルール解釈との違い

現在日本のゲームに参加していないので、 どんな事情でゲームが行われているのか分からないので一概には言えませんがき気づいた範囲で。


オブストラクション
ジャッスル
スクリーン

座学でICF審判の話を聞いてるときは
「けっこう厳しく取るんだな」
と感じました。

ルールの上では
「これではマンツーマンディフェンスなど不可能ではないか」
というくらいのことが書いてあるし、 ICF審判もかなりシビアなこと言っていたので、ディスカッションのときに受講生の皆で
「ポジションを争うのはゲームの性質上仕方がないじゃないか!」
「自陣に向かって行く敵に単にくっついて行くだけなのか」
「これではカヌーポロ自体が成り立たないじゃないか」
と質問攻めにし、なんだか分からないうちに次の話題に移ってしまう事態が起こってました。
しかし、実際にゲームのときは選手がオブストラクションで反則をとられる場面は少なかったです。
これについては実際にICF審判のレフリーを見てみないと分からないと思いました。


◇コーナースロー

シンガポールと香港の試合の主審をやった後に、ICFのカヌーポロ委員長であるフリッツと僕の会話

「コナースローの時に、投げるプレーヤーの体がコーナーになかったな。あれはいかんよ」

と言われたので

「体がコーナーになくても、カヌーがコーナーに着いてればいいじゃないか」

と答えたら

「バカもーん!お前の理屈では選手の体がフィールド上にあるから、 そこからゴールが狙えてしまうじゃないか。 コーナーの真上に体があればそういう心配がないのだ!」

とすごい剣幕で怒ったもんだから、このドイツ野郎なに怒ってやがると思い

「はっはっは!これは異なことを承りますな。コーナーから直接シュートはできないと、 閣下がお作りになった、ルールにあったように思われますが」

と食い下がってみると

「戯けが!もしそれを承知の上でプレーヤーがシュートを放ち、 キーパーがボールはじいたはいいが、それがゴールしてしまったらどうするんだ? キーパーが触っているので直接にはならんし、ルールを悪用したプレーではないか! こういったリスクを最小限に食い止めるのが我等の使命である。 この場合貴様はいかに判断するんだ?」

と今にもメガネから充血した目玉が飛び出してきそうだったので

「御意でござります。恐れ入り奉りました」

とやっつけられました。

とにかくコーナーのときは、カヌーではなく、体がコーナーの真上になければいけないのだ。
ちなみにフリッツ君はオランダ人でした。


◇筆記試験の内容

@ GPSでゴールを外して、もう1回シュートしたらどうなるか?

A国際試合のとき審判は合計で何人必要か?

B ゲームのときに選手は自分のチームを他と区別する為にどのような格好、装備を着用しなければならないか?

C サイドスローのときに相手の選手が自分の1メートル以内にいて投げるのを邪魔したときに、 審判としてどのような判断をするか?

D Cと同じくサイドスローのとき、選手が故意的に手で水を漕ぎ前に進んで、 ボールを投げたらどのように判断するか?

E選手はどのようなタイミングでリザーブと交代できるか?

というような内容でした。

これを英語で文章にして答えます。
試験時間は1時間。
これで全てではありませんが、問題は回収されてしまったので、手元にありません。
また思い出し次第書き加えます


◇他の受験者たちの様子

今回受けたのは、
マカオ1名、イラン1名、マレーシア2名、中国2名、シンガポール3名、香港6名に僕を合せて、 15名でした。

エントリー用紙には15人で締め切ると書いてあったので、ぎりぎりでした。

 率直な感想としては、全員カヌーポロについてはそんなに詳しくないと感じました。
なにしろ中国人の2人は
「ポロのゲームはもちろん、ポロ艇すら見たことがない」
というものでした。
このうちの1人はスラロームの日中合同合宿のときに知り合った友達で、 試験も後半になり僕も中国人も受かる見込みが薄いなと悟ると
「だいたいあのICF審判の傲慢な態度がむかつく」
だの
「香港の野郎、いい気になって笛ばかり吹くな」
なんて愚痴を言い合っていました。

最後には
「あの偉そうなICF審判に手本を見せてもらおうぜ」
ということになり、中国人と一緒に
「我々はカヌーポロという観点では未開の地に住んでおり、審判のレベルも非常に低い。 なにしろここにいる、中国人にいったてはゲームを見ることすら今回が初めてという有様だ。 そこで発展途上の我等にICF審判であるあなたのレフリーを見せてほしい。 決勝の審判は君がやったらどうだ」
と言ってみましたが、
「I'm busy. No thanks」
って一蹴されてしまいました。

やはりこういったマイナースポーツなので、
「自国のローカルゲームで審判をやったことがあり、今回講習会があるので来てみた」
というのが全員の共通点でした。

この中で選手をやっていたという人間も少なく、半分もいないと思います。
シンガポールの若い2人は選手としてもエントリーしていただけあって講習でルールについて、 たくさんのきわどい質問をICF審判にぶつけていました。

 この15人の受講生の中で一番英語ができなかったのが僕で、 他の国の皆さんは講義についていける能力を持っていました。


◇これから受験しようと考える人へのアドバイス

落ちてきてこんなこと言うのもなんですが、それほど難しいテストではないと思います。
ただ、満たしておかないといけない条件が3つあります。

1:英語ができること
2:ルールのキャプター3がしっかり頭に入っていること
3:普段から審判として笛を吹いておくこと

僕の場合は今回、この3つの条件を全て満たしていなかったことに敗因があると見ています。
英語については、ちなみの僕のTOEICのスコアはこんなところで公開するのはチョット恥ずかしい数字ですが495点です。
英語は得意ではありませんが、話すのは嫌いでもないし、外国に行ったときなどは、 少々使っているので何とかなるのではないかと言う希望的観測を持って香港に乗り込みましたが、 甘かったです。なにしろ講習会のときはICF審判が講義しているとこが半分くらいしか理解できなくて、 なかなかの苦痛でした。

大学での語学の講義や、海外に行ったときに話しができたのは、 相手も僕が日本人だと知っていて、分かりやすいようにコミュニケーションを計ってくれていたからなんですね。
僕の英語は公の場やビジネスなどではとても使えないものだと痛感しました。

座学のときは、アイルランドの2人はこれは当り前ですが、 受講生はもちろん英語を100%理解できるものと思って講義してくれちゃいます。
TOEICで600点から700点くらいの英語力が必要なのではと思います。

ルールについては、キャプター3の基本的なことを全て答えられるようにしておけば問題なし。
ルールについてどう解釈したらいいのか?というのはICF審判に聞くしかないと思います。
それゆえに今後試験を受ける方は、事前の講習会に費用は掛りますが、 参加しておいたほうが無難だとは思います。

国内には国際審判はいないのだから、詳しい解釈まで答えられる人はいないはずです。
インターネットで調べるという手段もありますが、 僕は講習会に参加し実際にICF審判に詳しい話を聞くのがベストだと思います。
しかし、毎回この講習会があるわけではないそうです。
9月にドイツで世界選手権大会がありますが、このときは試験だけで講習会はないそうです。


では最後の普段から審判として笛を吹いているというのは、 これをやっておかないと実技の試験のときに、瞬時の判断ができないからです。
僕は普段スラロームばかりでこちらのトレーニングはまるでしていなかったという状態でした。
最低でも、自分がプレーしていてカヌーポロに接する機会が多いなどの条件が必要でしょう。
その証拠にシンガポールの2人は選手も兼ねていて、 他の人間に比べてポロに接する時間が多かったが勝因だと思われます。
なにしろ彼等だって、試験を受けるのは初めてだったし、審判の経験だって多くはなかったのだから。
結局受かったのは、香港の3人、シンガポールの選手を兼ねた2人でした。
僕の予想としては、岩永さんなら確実にいけると思っています。


◇全体の感想

月並みではありますが、受けて良かったと思います。
審判は選手、監督、コーチ、同様に必要不可欠な存在であり、 カヌーポロの発展には欠かせませんので、 現在は国内における国際審判はゼロですが、一人でも多くの審判が必要だと思います。

まあ、今回の僕のような準備の仕方では落ちて当然でした。
僕みたいのが国際審判になったら、選手が困ってしまう。

なにかあったときに、オフィシャルの人ともスムーズに会話もできませんし…情けないです。

もっと英語を話せるようにし、普段からポロに接する機会を増やして次回に望みたいと思います。


朝野公平



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