「スラローム講習会を受けて」



2003年1月25日、とても風の強い日だった。
ましてや、周りに何もない印旛沼中央用水路(通称=沼)では尚更である。
水面が風で少し波立つ程であり、正直、コンディションは最悪であった。

「こんな日に出来るのか?」

と思いながらも、
予定通りスラロームK1ナショナルチームの安藤太郎さんと佐藤俊平さんが来てくれた。

このお二人はスラローム界では知らない人はいないと言うくらいの有名なアスリートで、 雑誌『カヌーライフ』には毎回必ず載っているような人達である。
そんな人がわざわざ沼へ足を運んでくれるとは夢にも思わなかったことだ。

元は岩永さんが企画した事で、 岩永さんと鈴木さんが年末年始に御嵩のスラローム合宿に参加し、 その時にこの話が持ち上がったと言うことらしい。(たぶん…)


九時半頃になり、講習会参加者が集まる。
先ずはお二人の自己紹介。
そして会長からの謝礼金渡し。


さて始めようということになったが、人数の関係により二つのグループに分かれた。
一つはインヴァースと代表マレーシア組、もう一つは佐倉高校とジュニアの子共達。
ちなみに自分は怪我のため、陸上からの見学であった。


みんな乗艇すると、まずはウォーミングアップとしてロケット鉛筆方式に追い抜いて いくのを500m×4セット。

安藤さんや佐藤さんのダッシュはとてもきれいで姿勢が良いのは遠くから見てもわかり、 何よりずっとペースとフォームが崩れないことに驚いた。
それにしても風のある日のロケットほどキツそうであり、 安藤さんと佐藤さん以外終わった後いつもより少しくったりきているのは陸上からでも窺えた。


そして本格的な講習が始まる。


私は基本的にインヴァースとマレーシア組、 安藤太郎さんが教えている方を見ていたが、 どちらのグループも最初はフォワードストロークの講習から始めていた。

まず気をつけるべく基本的な要点を説明した後、お手本を見せ、 それから一人ずつゆっくり漕いでもらいそれを見て個々にアドバイスをしていく。

すべては聞き取れなかったが、アドバイスはこんな感じである。


 @水を前からキャッチ

 A上下に揺れない

 B胸を張りながらへそは下へ向ける感じ

 C顔を上げる

 D押し手を下げない。

等々こんな感じのアドバイスをみんなにしていた。


なかなか難しそうである。
みんなアドバイスされたことに頷きはするが実際直っているかは自分自身分からないからだ。
そもそも言われたところで出来るようになるなら苦労はしない。
言われてもすぐには出来ないから練習に練習を重ねるのだ。


まずきちっとしたフォームを身につけ、 それからそのフォームをいつでも自然と出せ、 かつずっと崩さないように身に染みつけていく訓練をしないと漕ぎ方というものは変わらないと自分は思う。
おそらくこの場合、何回も何回も見てもらって漕ぎ方を直していかないと駄目だろう。


フォワードストロークを一通り終えると、次は艇を傾けながら漕ぐという事をやっていた。

右に傾け10m程度、そしたら次は左に傾けまた10mというのを繰り返していた。

普段傾けて長く漕ぐことがないため、その姿勢を維持するのに側筋が辛そうだった。

何回か繰り返した後、次はみんなで円を描き始めた。もちろん艇を傾けながらである。

菅谷さん曰く
「出来ている人は傾けながら普通に漕げば自然と円を描く。
 出来ていない人はそのまままっすぐ進んでしまう。
 もしくは、外側を長く漕いで調整してしまう。」
そうだ。


それを終えると次はテレマークでのジグザグをやっていた。
まずは安藤さんのお手本、とてもきれいだと思った。
まさに無駄がないと言った感じである。
ゆっくりではあったが何より失速がない事に驚いた。
他の人は曲がることを意識しすぎて、テレマークの際、失速してしまう。
おそらく、ダッシュの時はもっと顕著に差が出るであろう。


そしてついに、安藤さんのテレマークターンが見れるときがやってきた!

今日はこれを見に来たと言っても過言ではない。
自分的にはそれだけ楽しみにしていた。

「スラのトップレベルのターンてどんなんだろう?」

というごく単純な疑問を抱きつつ、自分の中ではいろんな妄想に駆られていたりもした。


スラ艇に乗り換え、本腰を入れ
「これからやっていくけども、まずはお手本ということで。」
の様な感じで安藤さんがその場で三回転した。

思わず見とれてしまった。
一緒にいた宮野も思わずビデオを取るのを忘れて安藤さんのターンに魅了されていたようだ。
やはり岩永さんが言っていたように、見るだけでも価値のあるものだった。


安藤さんのターンは速いのはもちろん、きれいだなという印象を強く受けた。
一つ一つの動作が丁寧で、トッププレイヤーの証とも言えるターンであった。


みんな思わず拍手。

フォワードストロークの時と同様、ターンでも基本的な要点を説明した後、 三人ずつ並んで三回転していく。

スラ艇とポロ艇の性能の差を抜かしても、安藤さんの方が断然速いだろう。
気が遠くなるほど練習したんだろうというのが見ただけで分かる。
本物のアスリートというのはこういう物なのだろうか。



逆回りの三回転もした後、

 @ダッシュからの180度ターン

 Aその場で120度くらいターン→ダッシュ→270度ターン→ダッシュ

 BAの逆回りバージョン

 Cダッシュ→90度ターン→反対に90度ターン→ダッシュ

 DCの逆回りバージョン

等々色々な事をやりながらみんなにターンのポイントなどを教えていた。


ある程度メニューが済むと、みんな上がり、豚汁を食べた。
火を焚いているドラム缶へみんなが集まり、和気あいあいと話している。
安藤さん達がサインや写真を頼まれる場面もあり、少しだけ羨ましかった。
(サインが普通の楷書だったのが微笑ましかった。)


沼での講習を終え、その後会長の家の近くのお寺で座談会をやるということでお寺まで移動した。


そして座談会が始まった。

座談会は主に質問形式になっていたが、すべては書きにくいので、座談会での内容を まとめて書きます。


まず、@安藤さんや佐藤さんについて。

【スラロームのトレーニング】

安藤さんや佐藤さんのトレーニング種目は基本的に一種目。 乳酸系なら乳酸系のトレーニングのみ、 エアロビクス系ならエアロビクス系のみと徹底してやっているそうで、 よって、練習時間としては、短いようです。

理由としては、
「それだけをやらないとその実力が落ちるから。」(?)
だそうです。


また、水上での実践的トレーニングでもやる時間は短いそうです。
コースを数回下ると決めてそれを全力でやって終わり。
でもかなり疲れそうですね。
ちなみに安藤さん達はコーチからの教えで、前で下ったら後ろでも下っているそうです。
バランス良く筋肉をつけるためでしょうか。


安藤さんや佐藤さんの陸上でのトレーニングは、よくやるものでは腹筋や腕立て、 ウェイトトレーニングにおいてはベンチプレスやベントロール、カール、リストなど である。

特にリストは重要であるらしい。


【身長とパドルの長さの関係】

スラロームのパドルはポロのパドルに比べて短い。
KCCの山口裕美子さん(カリメロ)が御嵩によく来るらしく、 彼女のパドルの長さは202cmだそうだが、スラローム的にはそれは長いそうで長くても198cmだそうです。

パドルが身長に比べて長いと、 ストロークは多少長くなるが回転が遅くなり結果としてスピードが落ちるということなのだろう。

しかし、ポロにおいては漕ぐという以外にもキーパーだったりカットだったりと様々な要因がパドルの長さを決定する。
漕ぐという面だけでパドルの長さを決定するのは如何なものかというのが正直な意見である。

ちなみに安藤さんは204cmの75°でブレードは少し小さめだそうです。
これはストロークは長ければ長いほどいいということを重視し、 回転数はブレードを小さめにしたことにより補っているそうです。


【大会前のピークの持っていき方】

安藤さんの大会前の精神的ピークの持っていき方は、 主に呼吸法や読書だそうだ。
保谷さんの「勝負MD」みたいなもんなのか。

一流アスリートだからといって特殊な方法を行っているわけではないようだ。
こればっかりは人それぞれということなのだろう。

安藤さん曰く
「自分は緊張しているとかリラックスしているとか、
 今自分はどんな精神状態だか分かっているときは、
 緊張しすぎずリラックスしすぎずいい状態へ持っていくのは難しくはないが、
 今自分がどんな精神状態にあるか分からないときはどうしていいか分からず、
 苦難するそうだ。そのためにメンタルトレーニングが必要だ」
と言っていた。

やはりトッププレイヤー。 自分といえば、リラックスするに越したことはないと思い緊張したときに深呼吸などをするな どという事しかした事がなかった。
これを機に少し考えてみようと思った。


次にAカヌーという競技について

【カヌーという競技】

カヌーという競技は、フォワードストロークがすべての基本となっていて、 そこからスイープやターンへと枝分かれしているような構図になっている。

何をするにしてもまずは、フォワードストロークのフォームが出来ていないと駄目らしい。
そういう意味で、ロケット鉛筆のダッシュはいい練習だそうだ。

また、下半身がとても大事で、漕ぐときは膝をカヌーにつけてストレッチャーをとて つもなく強く踏ん張っているそうで、そうすることにより、カヌーが左右にぶれるこ とを防げるそうです。


【テレマークターンでの腰の使い方】

スラローム艇は長いために腹筋、とくに腹斜筋をとても使うそうだ。
ポロ艇においてはスラ艇に比べて短いため腹斜筋を使い切る前に回りきってしまうそうだ。
だからと言って腹斜筋が必要ではないということではなく、 だからこそ他の人と差をつけるために鍛え、活用する事が大事なんじゃないかと感じた。


【シャフトの握り方】

シャフトは外側の指(小指や薬指)を強く握ると背中の筋肉をより多く使い、 指すべてでぎゅっと握ると手だけで漕いでしまいます。
安藤さんや佐藤さんはほんとに軽く握っているだけだそうです。


【伸びる時】

安藤さんによると、人は伸びる時でも二つのパターンがあるそうです。

一つはがむしゃらにやって伸びる時。

二つ目はテクニックを意識して伸びる時。

自分に照らし合わせると、二つ目の方はまだ実感したことは無いのですが、 一つ目の方は高校時代を思い浮かべました。

インヴァースに混ざって必死でやっていたあの頃はまさにがむしゃらだったと思います。
これからもがむしゃらにやらないといけないとは思いますが、 少しテクニックも意識してみようと思いました。
(性に合わない気もしますが…)


また、スラロームという個人競技において、 自分で自分を高めるには「常に」意識して漕ぐことが大事だそうです。
そういう意味でポロは団体競技であり、チームの仲間同士で互いに注意し合えるのでいいと言っていました。



最後に、お二人がカヌーをやっている理由は

『単に好きだから!!!』

ということです。

それはみんな同じなんじゃないかなと思いました。
好きだからやるなんて当たり前っちゃ当たり前ですよね。
きっかけはやはりそうあるべきだと思います。


座談会の内容すべては網羅していませんが、大体こんな感じです。

この日はそれにて終了ということになりました。
自分自身とても勉強になりました。
今度はちゃんと水上にて講習を受けたいと思います。
安藤さん、佐藤さん、ほんとに有り難うございました。



長くつまらない文章をぐだぐだと書いてしまいすいません。
最後まで読んでいただき有り難うございました。


                     佐倉インヴァース 平本 壮